フイ・フェン選手が語る勝利の裏側と夢:「今年こそ私の年にしたい」
2025ロックンロール・オープン
2025年6月、アメリカ・オハイオ州クリーブランドで開催された「ロックンロール・オープン」において、シンガポールのトップボウラー、フイ・フェン選手が見事優勝を果たしました。この大会は、アメリカ国内外の強豪選手が集うプロ・ボウリング界の主要大会の一つです。
フイ・フェン選手にとって、この大会は「絶対に勝ちたい」と思っていた特別な舞台であり、試合前から強い決意をもって臨んでいました。その想いを実力で証明した彼女の勝利は、アジアのボウラーたちにとっても大きな励みとなるニュースです。
勝利を導いた強い意志と冷静な判断力
■ 友人たちの後押し:「ロックンロールに集中して勝て!」
フイ・フェン選手は大会前、「スケジュールを見た瞬間に、ロックンロール・オープンを絶対に勝ちたいと思った」と語っています。理由のひとつは、表彰台で披露する“ロックンロールポーズ”を撮影するためだったという微笑ましいエピソードもあります。
彼女の友人たちもこの大会にかける彼女の思いを知っており、練習中には「他の大会はどうでもいいから、まずはロックンロールに集中して勝て!」と励まし続けていたそうです。試合中、勝利が近づくたびにそのポーズを思い出し、自分にプレッシャーとエネルギーを与えていたという話からも、彼女の強い意志と集中力の高さがうかがえます。
■ 技術面での緻密な調整と冷静な試合運び
今回の勝利で際立ったのは、フイ・フェン選手の投球における精密さと状況に応じた冷静な判断力です。
彼女はインタビューで、「ストライクを狙うことよりも、良いショットを打ち続けることを意識していた」と語り、特にボールスピードや回転軸(エクス・アクシス・ローテーション)を正確に保つことに注力していたと明かしました。これは単なる力任せのプレーではなく、細部まで計算されたプロフェッショナルな戦略だったことを物語っています。
また、対戦相手であるジョーダン選手も高い安定感を持っていましたが、右レーンでの1投の失敗が勝負の分かれ目となりました。フイ・フェン選手も「もし彼女があの投球を成功させていたら、もっと接戦になっていた」と正直に評価しています。
■ 第10フレームでのミスとリカバリー能力
緊張が高まる終盤、第10フレームではフイ・フェン選手に思わぬアクシデントがありました。チームとの間での「ボール変更に関する意思疎通のミス」が原因で、予定外のボールを本番の第一投で使ってしまったのです。
本来は数回の試投で反応を確認する予定だったボールを、いきなり本番で使用したことでリスクが高まりましたが、彼女は冷静にそのミスを受け止め、動揺することなく試合を立て直しました。こうした即座の対応力と精神的な強さも、彼女が一流である理由のひとつでしょう。
■ 次世代ボウラーへの思い:「アジアの希望に」
フイ・フェン選手は、今回の優勝を「アジア、特にシンガポールの若いボウラーたちにとって励みとなるような勝利にしたい」と語っています。彼女自身も、長年にわたって厳しいトレーニングと国際大会での経験を積み上げてきた努力の人です。
特に、幼少期からの友人であり現在も競技仲間である選手との絆についても触れ、「12歳からの知り合いで、人生の半分以上をともに歩んできた」と語っています。このような人間関係の深さと、仲間との信頼感も、フイ・フェン選手の支えとなっていることがわかります。
また、彼女は冗談交じりに「もしボウリングで成功していなかったら、今ごろは9時から5時までの普通の仕事をしていたかもしれない」とも話しており、自分の選んだ道が報われたことへの感謝もにじみ出ていました。
■ 目標は「プレイヤー・オブ・ザ・イヤー」
フイ・フェン選手は最後に、「プレイヤー・オブ・ザ・イヤー(年間最優秀選手)」という目標がずっと夢だったと語っています。昨年もそのタイトルに近づいたものの、「ジェーン・ビー選手の活躍が素晴らしすぎた」ため、あと数勝が足りなかったと振り返りました。
しかし、今シーズンの開幕戦となるこのロックンロール・オープンでの優勝によって、「今年こそがその夢を叶える年になるかもしれない」という自信をつかんだ様子です。
夢を追い続ける姿に、アジア中が勇気をもらった
2025年ロックンロール・オープンでのフイ・フェン選手の優勝は、技術、精神力、仲間との絆、そして勝利への執念が結集した結果といえます。その姿は、アジアの若手選手たちにとって大きな刺激となるだけでなく、国際舞台でのボウリング競技の魅力を再認識させてくれるものでした。
「今年こそは私の年にしたい」という彼女の力強い言葉に、今後の活躍への期待が高まります。次の大会、そして年間最優秀選手の座に向けて――フイ・フェン選手の戦いは、まだ始まったばかりです。