トム・ヘス、圧巻のパフォーマンスで通算11度目のタイトル獲得

シーズン最初のメジャー大会でトム・ヘスが存在感を見せつける

2025年のPBA50ツアーはすでに熱戦が繰り広げられている中、シーズン初のメジャー大会として注目された「バド・ムーアPBA50プレイヤーズ・チャンピオンシップ」で、トム・ヘスが圧巻のパフォーマンスで優勝を飾りました。大会を通じて安定感ある投球を重ね、決勝戦では298点というほぼパーフェクトなスコアでNo.1シードのジョン・ジャナウィッツを下し、通算11度目のPBA50タイトルを獲得しました。

この勝利は、単なるタイトル獲得にとどまらず、今シーズンの主役の座を強く印象付ける一戦となり、トム・ヘスの名が改めてPBA50ツアーに刻まれた瞬間でもありました。

 

勝利までの歩みと勝負を分けた要素

■ 5位シードからの快進撃:下剋上を成し遂げる

トム・ヘスの優勝は、単なる実力の証明というだけでなく、「5位シードからの挑戦」というシナリオを乗り越えたドラマでもありました。

初戦となる第1試合ではディノ・カスティーヨと対戦。落ち着いた投球で徐々に差を広げ、終盤には4連続ストライクを決めて226-202で勝利。ここでリズムを掴んだヘスは、続く第2試合でピート・ウェバーと激突。ウェバーが中盤に4連続ストライクで追い上げを見せるも、ヘスは5フレーム中5ストライクという怒涛のスタートから、終盤に3連続ストライクを決め、246-193で快勝

準決勝の相手はマイケル・ハウゲンJr.。序盤から落ち着いてストライクとスペアを重ね、相手が苦戦している隙を逃さず、重要な10フレームでストライクを決めて214-208で決勝へ進出。こうして、5位から着実に勝ち上がり、栄光の舞台へとたどり着きました。

 

■ 決勝戦:No.1シードを粉砕した“完璧に近い”ゲーム

決勝の相手は、大会を通じて抜群の安定感を誇っていたNo.1シードのジョン・ジャナウィッツ。彼は予選から好調を維持し、「優勝最有力」と目されていました。

しかし、ヘスはここで最高のパフォーマンスを披露。最初の11投すべてをストライクに成功させ、最後の1投でわずかに8ピンを倒し、スコアは驚異の298点。ジャナウィッツも中盤以降にリズムを取り戻し、7つのストライクを放って235点を記録しましたが、ヘスの猛攻の前に力及ばず。

ヘスは試合後、次のように語りました。

「JJ(ジャナウィッツ)との試合は本当にいい内容だった。いくつかラッキーな部分もあったけど、全体的にいい投球ができた」
「プレッシャーは彼の方にあった。自分はただ、良いショットを打つことに集中した」

この冷静さと集中力こそが、ベテランの強みであり、過去2年間この会場で届かなかった優勝に対する執念の現れでもありました。

 

■ 経験と分析力:勝因は「レーンの理解」と「仲間の助言」

今大会は、バド・ムーア氏の自宅を使用した特設レーンで開催されたことも話題となりました。ヘスは2022年にこの会場で2位、2023年には4位と悔しい思いをしてきましたが、その積み重ねた経験と対応力が今回ついに実を結びました。

「13番レーンと14番レーンの違いを理解していた。アプローチの問題で足を遅くせざるを得なかったけど、それが逆に役立った」

また、重要な場面で彼を支えたのが同じPBA50ツアー選手でボールリプレゼントでもあるミッチ・ビーズリー。準決勝進出をかけた最後のポジションラウンドで彼の助言に従い、3-2の調整を行ったことで、見事ステップラダー入りを果たしました。

「頭の中がパンクしそうだった。あの時のアドバイスがなければ決勝に残れていなかった」

このように、勝利は決して1人の力だけでなく、チームとしての連携があってこそ成し得たものだといえます。

 

11冠達成の先に見据える偉業と未来

今回の優勝により、トム・ヘスは通算11個目のPBA50タイトルを獲得。これで彼はパーカー・ボーンIII、ロン・モーア、ジーン・スタスと並ぶ歴代トップの1人となりました。

「パーカーやジーン、ロンと並ぶことができて本当に光栄だ」
「今の目標はウォルター・レイ・ウィリアムズJr.の16タイトルを超えること」

さらに、彼の視線はすでに次の舞台へと向けられています。それが、PBA50ワールドチャンピオンシップの優勝です。もしそれを達成できれば、ヘスはトリプルクラウンとグランドスラムの両方を制覇する唯一の存在となります。

「ジャクソン(ミシガン)、待ってろよ。必ず取りに行く」

 

■ 最終順位(バド・ムーアPBA50プレイヤーズ・チャンピオンシップ)

1位:トム・ヘス
2位:ジョン・ジャナウィッツ
3位:マイケル・ハウゲンJr.
4位:ピート・ウェバー
5位:ディノ・カスティーヨ

 

■ チャンピオンシップラウンドスコア

  • 第1試合:ヘス 226 – カスティーヨ 202

  • 第2試合:ヘス 246 – ウェバー 193

  • 準決勝:ヘス 214 – ハウゲンJr. 208

  • 決勝:ヘス 298 – ジャナウィッツ 235

 

■ 次戦情報

次回のPBA50スケジュールは「USBCスーパースニアクラシック」(60歳以上対象)、5月29日よりラスベガスのサムズ・タウン・ボウリングセンターにて開催。大会の模様はBowlTVにて配信予定

今季のPBA50ツアーは、まだ始まったばかり。トム・ヘスという“レジェンド候補”がどこまで歴史を塗り替えるのか、ますます目が離せません。