ブラッド・アンジェロ、執念の勝利
PBA50「ザ・ヴィレッジズ・クラシック」2025を制覇

2025年5月、フロリダ州で開催された「PBA50 ザ・ヴィレッジズ・クラシック」で、ブラッド・アンジェロがついに悲願の優勝を果たしました。過去に幾度となく優勝目前で敗れてきたアンジェロ。2023年の同大会でも最終フレームで勝利を逃し、前週の大会でもトップシードながら勝ちを手にすることはできませんでした。しかし今回、彼はその苦悩とプレッシャーを乗り越え、完璧な投球で栄冠を掴み取りました。

 

勝利への道のりと心の支え

トーナメントの展開と劇的な決勝戦

今大会でブラッド・アンジェロは、3連戦を勝ち抜いて決勝に進出しました。その道のりは決して平坦ではなく、試合ごとにプレッシャーとの戦いが続きました。

決勝戦の相手は、過去にアンジェロが勝利を逃した相手でもあるトム・アドコック。両者はPBA50ツアーの中でも実績と経験を兼ね備えた実力者同士であり、観客の期待も高まりました。

試合は序盤から一進一退の展開となり、どちらが先にリズムを掴むかが勝敗を左右するような緊張感が漂っていました。アンジェロは序盤で安定した投球を見せたものの、第8フレームで6-7-10スプリットという厳しい状況に直面。オープンフレームとなり、会場に一瞬静寂が広がります。

その瞬間、アンジェロはふと左手首に巻かれた2本のブレスレットを見つめました。それは、娘たちのブリエルとライリーが幼い頃に作ってくれたお守りでした。さらに、妻のミシェルがデザインしたジャージに描かれたプルメリアの花が、彼の心を落ち着かせました。

「『また同じことが起きるのか』という思いが頭をよぎりました。でも、ボールを持っているのは自分だ。とにかく投げるんだと自分に言い聞かせました」

とアンジェロは語ります。

第9フレームで確実にスペアを取り、迎えた最終第10フレーム。アドコックが先に投げ、スコアを206にまとめます。それに対してアンジェロは、最初の投球でストライクを決め、確かな自信を得ます。その瞬間、彼は静かに振り返り、観客席を見つめながらほっとしたように微笑みました。

続く2投でも連続ストライクを叩き出し、最終スコアは233。完璧なクローズアウトで試合を締めくくり、アドコックに大きな差をつけて文句なしの優勝を飾りました。

試合終了後、アンジェロとアドコックは笑顔で互いを称え合い、固く抱き合いました。その光景は、勝敗を超えたスポーツマンシップを象徴するものであり、多くのファンの心を打ちました。

「夢の中のようでした。『これは現実か?』と何度も思いました。やっと扉を開けることができた。この勝利が次の大会にもつながっていくはずです」

とアンジェロは試合後に語り、長年の苦労と悔しさが報われた瞬間を噛みしめていました。

今大会は彼にとって通算23度目のステップラダーファイナル。その経験と、家族への深い思いが一つとなり、ついに最高の形で結実したのです。

 

セミファイナル:強豪ボーンIIIとの激戦

準決勝では、ディフェンディングチャンピオンのパーカー・ボーンIIIと対戦。ボーンは初投と最終投で7-10スプリットという不運に見舞われ、さらに7ピンを外す珍しいミスも。アンジェロは冷静に対応し、最終スコア216で212のボーンを下しました

 

初戦の対戦:ペラルタとの接戦

最初の対戦相手は、PBA50デビュー2大会目で初のステップラダー進出を果たしたフランシスコ・ペラルタ。左投げのペラルタは序盤から勢いに乗るも、7ピンミスなどのミスが響きました。アンジェロは中盤に4連続ストライクを決め212-197で勝利を収めました

 

家族の絆がもたらした勝利

今回の勝利は、アンジェロにとって2022年以来のPBA50タイトルとなります。しかし、彼にとって何よりも大きな意味を持ったのは、家族からの支えでした。娘ブリエルが5歳の頃に作ってくれたブレスレットを今でも試合で着け続けている彼。今週、彼女は大学を卒業しますが、アンジェロは次のメジャー大会「PBA50プレイヤーズ・チャンピオンシップ」に出場するため出席できません。

「娘から『パパがいなくても大丈夫。家族のために働いてくれてありがとう』というメッセージをもらって、涙が出ました」

と感慨深く語るアンジェロ。その言葉が、彼の心に再び火をつけたのでしょう。

 

大会結果:PBA50 ザ・ヴィレッジズ・クラシック 2025 最終成績

順位選手名賞金
1位ブラッド・アンジェロ$8,000
2位トム・アドコック$4,500
3位パーカー・ボーンIII$3,500
4位フランシスコ・ペラルタ$3,000
5位ジェイソン・カウチ$2,500

チャンピオンシップ・ラウンドスコア

  • 第1試合:ペラルタ 245 – 200 カウチ

  • 第2試合:アンジェロ 212 – 197 ペラルタ

  • 第3試合:アンジェロ 216 – 212 ボーンIII

  • 決勝戦:アンジェロ 233 – 206 アドコック

この勝利が、ベテラン・アンジェロにとって更なる飛躍のきっかけになることでしょう。次のメジャー大会でも彼の活躍に注目が集まります。