Mark BakerのQ&Aレッスン
プロが答えるボウリングの疑問集

PBAツアーでも数々の選手を育ててきた名コーチ、Mark Bakerが、YouTube視聴者から寄せられたボウリングの質問に直接答える人気シリーズ「Questions For Coach」第7弾。この記事では、その中から特に重要な技術ポイントをピックアップし、解説を交えながらご紹介します。

1. 頭がブレる原因と修正法(2ハンドボウラー向け)

🎯質問内容:

「2ハンドで投げていますが、リリース時に頭が左に動いてしまいます(右利き)。動画を見ると、スイングが腰を通過したあたりで左に傾いているようです。これは肩を使いすぎているからでしょうか?」

🧠Mark Bakerの答え:

自己分析としてはかなり鋭いです。実際、私が以前制作した2ハンド用のインストラクション動画でも、このテーマは非常に重要なポイントとして取り上げました。」

では、なぜこのような現象が起きるのでしょうか?

🔍原因:肩をパワー源にしている=下半身との“タイミングのズレ”

ボウリングにおけるスムーズでバランスの取れた投球とは、下半身が主導し、上半身(特に肩や腕)はその流れに乗っている状態です。

しかし、今回のように「肩でボールを投げている」場合、スイングの主導権が上半身に偏ってしまい、タイミングがずれて頭の位置が安定しなくなるのです。

特に2ハンドの場合、両腕の動きが大きくなる分、タイミングがわずかに狂っただけでも頭が左右に揺れやすくなります。結果的に、リリースの瞬間に身体がねじれる形になり、頭が左に流れてしまうのです。

💡改善方法:正しい“タイミング”と“構え”を意識しよう

この問題の本質は「肩の使い方」ではなく、「スライド足の位置とスイングタイミングの同期」にあります。

✅ステップ①:構えを見直す

  • 例に出されたジェイソン・ベルモンテ(Belmo)のように、アドレス時に背筋をしっかり伸ばして立ちます。

  • 腕で無理にボールを支えず、自然な振り子のようなスイングを作れる“準備”の姿勢にすることが重要です。

✅ステップ②:スライド足の位置に注目

  • 投球時、スライド足(左足)が頭の真下に入るタイミングでスイングが並行になっているかを確認しましょう。

  • このタイミングが合えば、体の軸が安定し、肩を無理に使う必要がなくなり、頭もブレません

✅ステップ③:右足をパワー源にする

  • リリース時の力は、肩ではなく右足(蹴り足)から生み出すように意識します。

  • 下半身主導になることで、肩と頭が静かに保たれ、スムーズな回転が得られるようになります。

🎥チェックポイント(ビデオ分析時の注目点):

  • リリース前後の頭の高さと角度は変わっていないか?

  • スライド足の位置とスイングが並行しているか?

  • 肩が先に前へ出て、頭が引っ張られるような動きになっていないか?

🧘‍♂️補足:静かな頭=安定したショット

多くのプロボウラーに共通する特徴のひとつが、「頭の位置が最後まで静かに保たれている」という点です。頭が揺れる=目線も揺れ、結果的にターゲットがずれてしまいます。逆に、頭が静かであればあるほど、スイングの再現性が高まり、コントロールミスが激減します。

✍️まとめ:

頭が左に流れる問題の原因は、単なる肩の使い過ぎではなく、「身体の使い方のタイミングのズレ」が引き起こすもの。
まずは構えを正し、タイミングを意識し、下半身主導の動きを徹底することが、もっとも確実な解決策です。

 

2. クロスオーバーステップはNG? 〜“歩き方”から見直す助走ステップ〜

🎯質問内容:

「4歩助走で、親指なし(サムレス)で投げています。スイングの開始タイミングについて、動画では“クロスオーバーステップ”の段階で始めるように説明されていますが、それは正しいのでしょうか?それとも、2歩目や3歩目で始めるべきですか?」

🧠Mark Bakerの答え:

「まず第一に、クロスオーバーステップそのものをやめることをおすすめします。私は“クロスオーバー”という概念自体に賛成していません。」

❗そもそも“クロスオーバー”とは?

「クロスオーバーステップ」とは、たとえば右利きのボウラーが、助走の最初の一歩目で右足を左足の前に大きく交差させるように踏み出す動きのことを指します。

一見スムーズに見えますが、これがバランスとスイングの狂いの元になるとBaker氏は警告します。

🚶‍♂️なぜクロスオーバーはNGなのか?

❌「クロスオーバー=不自然な歩き方」

Markは例え話として、「信号が青に変わって道路を渡るとき、あなたはクロスオーバーして歩きますか?」と問いかけます。

➡️答えはもちろん「No」。
私たちは日常の中で“真っ直ぐ前に踏み出す”動きを無意識に行っているのです。

つまり、自然な歩行=バランスの取れた動作であり、これをボウリングにもそのまま取り入れるべきだとしています。

✅おすすめのステップ配分

✔︎ 1歩目:まっすぐ前に踏み出す(体重を安定させる)

  • バランスを保つために非常に重要な1歩目。

  • 真っ直ぐ前に出すことで、身体の軸が安定し、頭の位置もぶれにくくなる

✔︎ 2歩目:1歩目の延長上、やや内側に(クロスしない)

  • 「クロスオーバー」ではなく、“クロスインフロント”(前方で交差するような柔らかなステップ)を意識。

  • これにより、次のステップで自然に体重移動ができ、スイングとの連動性が増す。

🎯サムレスボウラーへの具体的アドバイス

親指を入れない投げ方(ノーサム、サムレス)の場合、スイングが短くなりやすいという特徴があります。そのため、一般的なタイミングでプッシュアウェイ(ボールの押し出し)を始めると、スイングとステップのリズムがずれてしまいます。

✅修正方法:

  • 1歩目が終わったタイミングでプッシュアウェイを始める
    → スイングが短いぶん、遅らせることでタイミングが合いやすくなります

  • これにより、上半身がボールに引っ張られず、下半身が主導する動きに修正できます。

🎥参考になるプロの動き

Mark Baker氏は、「Tom Daugherty(トム・ドーティ)」の投球動画を参考にすると良いと勧めています。彼はノーサムスタイルでも非常にコンパクトで効率的なスイングを持っており、「スイングの短さ」と「下半身主導の動き」の理想的なバランスを実現しています。

💬まとめ:助走ステップの見直しが、すべての基本

クロスオーバーは一見スムーズなように見えて、体の軸を崩す大きな原因となる場合があります。とくにノーサムのようなスイングの短いスタイルでは、ステップのタイミングや方向が崩れると、一気に投球の安定性が損なわれてしまいます。

Mark Bakerの提案はシンプルです:

「歩くように歩け。自然なステップが、自然なスイングを生む。」

助走の最初の一歩から、身体にとって無理のない、安定した動作を。それが結果として、安定したターゲットコントロールと、ボールに伝わる効率的なエネルギーへとつながっていきます。

 

3. 目線はいつまでターゲットに置く? 〜視線とスイングの“静けさ”が安定感を生む〜

🎯質問内容:

「右利きボウラーです。ターゲットエリア(矢印)を見ながら投球していますが、いつ視線を外せば良いか分かりません。リリース後、どのタイミングでピン方向を見るべきですか?」

🧠Mark Bakerの答え:

「この質問はとても良いですね。私はキャリアを通してずっと矢印を見てきました。でも、正直言って…実際にボールが矢印を通過するのを“見た”ことは一度もありません。

👀目線は「ターゲットを見る」のではなく「スイングを安定させるため」に使う

Markは「ターゲットを凝視すること」と「正確に投げること」が必ずしも一致しないという、興味深い考え方を提示します。

❗なぜなら…

  • 目線の役割は、フォームを安定させる“支点”であることが第一

  • 正確にリリースできていれば、視線が30フィート先やブレイクポイントに移っていても問題ない

  • 大事なのは、「目で追うこと」ではなく「頭が静かであること

🔄視線と“感覚の一致”のほうが重要

Mark自身は、矢印を見ながらも、リリースの瞬間には視線は自然に30フィート先へと移っているそうです。それでも、「自分がどれくらいターゲットを外したか」は感覚で正確に分かっていたとのこと。

彼が分類していたのは3つのミス:

  • ターゲットちょうど

  • 少し内ミス

  • かなり内ミス

つまり、目で見て確認しなくても、身体の感覚と連動していれば、それで十分というわけです。

✅頭が静かであれば、目線は自由でもよい

Markが強調するのは「目線の位置よりも、頭が動かないことのほうがはるかに重要」という点です。

頭が動かないメリット:

  • ターゲットとの距離感を一定に保てる

  • スイングが一定の軌道を維持しやすい

  • 投球フォーム全体の再現性が高くなる

👓視線の位置は“個人差”があって良い

目線に関して「正解」はなく、プロボウラーの中でも好みは分かれています

タイプ特徴向いている人
矢印(7~15フィート)を見る派ボールリリース直後の反応が分かりやすいコントロール重視型
ブレイクポイント(30~40フィート)を見る派曲がり始めるポイントを意識できる回転軸や角度を意識したい人
ピン手前を見る派体の開き防止や、視線安定に役立つストライク率を上げたい人

つまり、「どこを見るか」よりも、「自分にとって再現性が高いかどうか」を基準にするのが正解です。

🏹実践アドバイス:目線に関するトレーニング法

🧪方法①:リリース直前まで矢印を見続ける練習

  • 視線が早く動いていないか確認

  • 矢印を通過した瞬間に頭が動くクセがないかをチェック

🧪方法②:視線の高さと距離を変えてみる

  • 15フィート → 30フィート → ブレイクポイントと段階的に視線位置を変える

  • どこで一番「頭の静けさ」と「投球の安定性」が両立するかを探す

🧪方法③:ビデオ撮影によるフォームチェック

  • スローモーションで、頭の高さ・視線の方向を分析

  • 頭がスイングに引っ張られていないかを確認

💬まとめ:目線より「静かな頭」が命

「目で追うな、身体で感じろ」
これはMark Baker氏のレッスン全体を貫くテーマです。

ボールが矢印を通過したかどうかを視覚で確認する必要はない。むしろ、リリース時の「頭の安定」と「フィードバックの精度」こそが、狙ったラインに投げるための核心要素です。

 

4. フォロースルーが低いのはボールの重さのせい?

〜フォームの問題か、それとも身体の使い方か?〜

🎯質問内容:

「フォロースルーが肩の高さまで上がりません。ボールの重さが原因でしょうか?リリース後にすぐスイングが止まってしまい、腕が自然に上がっていかないように感じます。」

🧠Mark Bakerの答え:

「この現象は“ボールの重さ”が原因ではありません。本質的には、あなたの“身体の使い方”に問題があります。

🦴キーワードは「身体の機能性(Body Function)」

Mark Bakerは、ここで非常に重要な考え方を提示します。

「プロボウラーは、“ボウリングをしているときも、身体が自然に機能している”。
一方、アマチュアの多くは、“身体が機能していない状態でも、なんとかボウリングをしようとしている”。」

つまり、うまくいかない原因は“技術”ではなく、“身体の使い方”そのものにあるということです。

🔍なぜフォロースルーが上がらないのか?

❌「腕の力が足りない」わけではない

フォロースルーが低くなる原因は、ほとんどの場合「ボールが重すぎるから」ではありません。実際、プロでも16ポンドを使っていながら、なめらかに腕が振り切れています。

では、何が問題なのでしょうか?

🧘‍♂️答え:前傾姿勢が深すぎて、肩が自然に上がらない

Markは、分かりやすい例を挙げています:

「もしあなたが椅子に座って、前かがみになった状態で腕を振ってみてください。腕は頭の高さまで上がらないはずです。
逆に、姿勢を正し、顎(あご)を膝の上に置くように意識して構えると、腕は自然に上まで振り切れるはずです。」

つまり、体の姿勢が悪いと、肩が“詰まって”フォロースルーが途中で止まってしまうのです。

✅改善のための具体的ステップ

✔︎ ステップ①:前傾の深さを調整

  • 顎が膝よりも前に出ないように意識

  • 頭がボールの重さで前に倒れていないかを確認

✔︎ ステップ②:膝の曲げと骨盤の角度を見直す

  • 膝を「深く曲げすぎて」背中が丸くなっていないか

  • 骨盤が立った姿勢を意識することで、胸が開き、腕が上に上がりやすくなる

✔︎ ステップ③:フォロースルーの“制限解除”

  • 「高く上げよう」と意識するより、「上に抜ける道を身体が作れているか」を確認

  • 無理に腕を上げるのではなく、身体の状態が「自然に上に向かわせてくれる」かどうかを感じることが大切

📌補足:バランスが崩れていれば、どんなフォームも機能しない

ボウリングでは、「バランスが取れていること」があらゆる動作の基盤になります。

特にフォロースルー時は:

  • 重心が前に突っ込みすぎていると、腕は上に伸びきらない

  • スライド足と軸足のバランスが崩れていると、体が“起き上がり”、スイングが途中で止まる

🎥セルフチェックポイント(動画で見るべき箇所)

チェック項目理想の状態
フォロースルー時の頭の位置膝の真上に顎が乗っている
腕の動きスイング後も自然に頭の高さ〜耳の横を通っている
フォロースルー後の静止バランス軸足が浮かず、フィニッシュ姿勢が2秒保てる

📚よくある誤解:「重いボールだから仕方ない」

確かに、重いボールは腕に負担を感じるかもしれません。しかし、それは正しい体の使い方ができていれば補えることがほとんどです。

むしろ、前傾しすぎ/身体が詰まりすぎている状態で投げていると、軽いボールでもフォロースルーは止まってしまいます

💬まとめ:フォロースルーは“腕の問題”ではない

  • ❌ ボールが重すぎるからではない

  • ✅ 身体がうまく機能していないから

「フォームに問題があるのではなく、“フォームを支える身体”の状態が整っていないだけです。」

とMark Bakerは語ります。

身体のポジションと姿勢を正しくすれば、自然に、無理なく、スムーズなフォロースルーが実現します。結果として、回転もスピードも安定し、ピンアクションにも好影響を与えることになるでしょう。

 

5. 4歩助走→5歩助走への変更は避けるべき?

〜“偶数から奇数”への変更が難しい理由と、最適な選択肢とは〜

🎯質問内容:

「現在、4歩助走で投球していますが、5歩助走へと変更した方が良いでしょうか?その際に注意すべき点はありますか?」

🧠Mark Bakerの答え:

私は、4歩から5歩への変更はおすすめしません。なぜなら、“偶数ステップから奇数ステップ”への移行はリズムやフォームの安定性に悪影響を及ぼしやすいからです。」

🔁なぜ“偶数→奇数”の変更は難しいのか?

ボウリングの助走リズムは、「始動足」と「スイングの始動タイミング」が密接に関係しています。
特に偶数ステップ(例:4歩・6歩)は“左右交互”が基本動作で、重心移動やスイングのタイミングも自然と体に馴染みやすくなります。

これに対して奇数ステップ(例:5歩・7歩)は、“スタート足”と“プッシュアウェイのタイミング”の取り方が難しく、結果としてリズムの狂いやスイングミスが生じやすくなってしまうのです。

⚠️よくあるミス:右利きで5歩に変えた場合…

右利きのボウラーが4歩助走から5歩助走へ変更する場合、スタートを右足から左足に変えざるを得ないため、それまでのタイミング感覚が大きく崩れます。

たとえば:

4歩助走5歩助走
1歩目:右足 → スイング始動1歩目:左足 → “無意識な前進”になることが多い
2歩目:左足(スイング同期)2歩目:右足(リズムがズレる)

この“最初の一歩”のズレが、リリースポイントやスイングの軌道、さらにはフォーム全体に悪影響を及ぼすのです。

✅Markの推奨:4歩 → 6歩への変更

5歩に変えるくらいなら、6歩に増やしましょう。
これがMark Bakerの明確な提案です。

理由は以下の通り:

✔︎ スムーズなスタートが可能

  • 6歩にすれば、今まで通り右足スタートを維持できるため、リズムの崩れが最小限に抑えられる。

✔︎ 前半2歩は“リズムの準備”に使える

  • 最初の2歩はモーションに入るための助走、本格的なスイングは3歩目から開始。

  • Pete Weber、Norm Duke、Patrick Allenなどの殿堂入りプロも6歩助走を採用しており、実績あるアプローチである。

✔︎ 体重移動が自然に

  • 6歩助走では、スイングとステップの同期がしやすく、ボールの推進力を下半身で生み出しやすい。

  • フォロースルーも自然に高くなり、力強いリリースにつながる。

🧘‍♂️6歩助走への導入ステップ

✅ステップ①:今までの4歩助走の前に2歩追加するだけ

  • スタート足(右足)はそのままでOK

  • 最初の2歩はリズム・勢いづけの「予備動作」と考える

✅ステップ②:プッシュアウェイは3歩目で

  • 1歩目(右足)→ 2歩目(左足)→ 3歩目(右足)でボールを押し出す

  • 以降は、従来の4歩目〜6歩目にかけてスイングと連動

📚実例:6歩助走の成功者たち

  • Norm Duke:正確無比なコントロールとリズムが武器のレジェンド

  • Pete Weber:爆発力と多彩な投球ラインの持ち主

  • Patrick Allen:PBAメジャータイトル保持者、リズムと下半身主導の手本

これらの選手は、すべて4歩ではなく6歩を採用し、世界トップレベルの実績を残していることからも、6歩助走の有効性が伺えます。

💬まとめ:無理な“5歩”より、自然な“6歩”へ

「4歩から5歩への変更は、リズムを壊すだけの危険な試みになりかねません。」

Mark Bakerは、助走ステップの変更においては「フォームが自然に連動するかどうか」を最も重視すべきだと説きます。

右足スタートのまま助走を長くしたいなら、迷わず6歩を選びましょう。
それが、今までのフィーリングを壊さず、より強く安定した投球へとつなげていく一番の近道なのです。

 

6. スライド vs プラント

〜「滑る派」か「踏み込む派」か? 着地の違いが投球に与える影響〜

🎯質問内容:

「私はスライドせず、踏み込んで止まる“プラント”型なのですが、このようなスタイルでも空気(エネルギー)を前にうまく運ぶことはできるのでしょうか?」

🧠Mark Bakerの答え:

非常に良い質問ですね。プラントする選手が“エネルギーを前方に送る”という点で不利なのかというと、必ずしもそうとは言い切れません。ただし、危険な落とし穴があるのも確かです。

🧊「スライド」と「プラント」 それぞれの基本定義

着地スタイル説明一般的な特徴
スライドスライド足(通常は左足)で滑るように着地し、スムーズに減速するバランスが安定しやすく、スイングと連動しやすい
プラントスライド足でピタッと止まり、地面に“固定”するように踏み込む急停止による衝撃でバランスを崩しやすい。タイミング調整がシビア

🚨プラントのリスク:肩が引っ張られる“プルダウン”現象

Markが最も懸念しているのは、「プラントによって、肩を下に引き込んでしまう動き」です。

  • 踵(かかと)からドンッと踏み込む

  • 身体が止まり、ボールが先行

  • 結果として肩が「下がる・潰れる」
     → スイングが急に下向きに引かれ、回転が乱れる

このような状態になると、ボールのリリースが不安定になり、“サム抜けが早くなる”=回転軸が崩れる=縦回転が入りすぎる or 転がりが浅くなるなどの悪循環に繋がります。

✅成功しているプラント型選手の特徴

Markは以下の3名を「正しくプラントできている稀有な存在」として挙げています:

  • 🧢 Brad Angelo
     → 強靭な体幹で、踏み込みながらも全体の流れを止めずにフィニッシュ

  • 🎳 Shannon Pluhowsky
     → 左利きのパワーボウラーでありながら、女性でもトップレベルの安定感を誇る

  • 🧠 Michael Haugen Jr.
     → プラントを利用して、逆に身体の“支点”として利用している巧者

彼らに共通しているのは、プラントしながらも“空気(エネルギー)を前方に送る技術”を持っている点です。

🧭どうすれば「止まっても流れを殺さない」投球ができるのか?

✔︎ 上半身を引っ張らない

  • プラント時に「肩で引き下ろす」意識が入ると、スイング軌道が下に引かれてしまう

  • 胸を開いたまま、肩は静かに・腕は自然に“上へ抜ける”感覚

✔︎ “踏み込み”と“腕の加速”を一致させる

  • スライドで自然にスピードが吸収されるスタイルとは違い、プラントでは止まる=力を前方へ逃がす必要がある

  • リリース直前までエネルギーを溜め、リリース時に前へ“放出するように”意識する

✔︎ 踵ではなく「母指球」で受け止める

  • ヒール着地はブレーキ動作になりがち

  • ボールの親指側での着地(母指球)を意識すると、流れを止めずにコントロールが効く

🌪逆に「スライド」の強みとは?

スライド型のボウラーは、一般的に以下の利点を持ちます:

メリット説明
✅ スイングとの一体感スライドにより、身体の動きがスイングに干渉しない
✅ 着地の衝撃が少ない止まる動作が緩やかなため、膝や腰に優しい
✅ 回転軸が安定肩の高さが維持されやすく、リリースの再現性が高い

💡Markからのアドバイス:あなたはどちらタイプ?

  • 自分がプラント気味か、スライド型かを動画でチェックしてみましょう。」

  • プラント型の人は、まず“肩が下がっていないか”を確認する。」

  • 「スライド型を目指すなら、“最後のスライドを恐れず、受け入れる”感覚を養うと良い。」

💬まとめ:どちらも“正しい”。でも“使い方”が違う

「スライドか?プラントか? それは“正解・不正解”の問題ではありません。
問題は、“その動作が、全身の動きと調和しているかどうか”なのです。」

Mark Bakerは、スライドでもプラントでも、全体のバランス・スイングとの連動が保たれていればOKだと語ります。

ただし、プラントはその性質上、「エネルギーを止める」「肩を引っ張る」「タイミングを崩す」危険を含んでいます。
意識すべきは、「止まる」のではなく、「止まりながらも“流れを止めない”投球をすること」です。

 

7. 左手がボールに残る2ハンド問題

〜「離せない左手」がリリースを狂わせる?2ハンドボウラーのための左手脱却術〜

🎯質問内容:

「2ハンドで投げていますが、動画を見返すと、リリース直前まで左手がボールに残っていて、右手が“下から支える”形になっていません。結果として、回転がかからなかったり、リリースが遅れたりしています。この現象をどう解決すればいいでしょうか?」

🧠Mark Bakerの答え:

正直に言って、このパターンはあまり見かけません。少し特殊なケースです。だからこそ、私のアドバイスは“この問題を正確に解決するためには、まず動画を見せてください”というものになります。」

🤔なぜ「左手が残る」と問題になるのか?

2ハンド投球の基本は、助走中に両手でボールを安定させながら、リリース時に“右手だけで投げる”状態を作ることです。
つまり、リリース直前には左手は完全にボールから離れ、右手が下から支えるような形になるべきです。

しかし、左手が長く残ってしまうと…

⚠️こんな悪影響が起きる:

現象原因結果
ボールが右に飛び出す右手が“外側から押す”形になりやすい回転軸が乱れ、コントロールミス
回転がかからない右手が下から支えられていないロフトやバックエンド反応が不安定
タイミングがずれる上半身が早く開くスイングに“遅れ”が出る

👣よくある原因:左手が「手伝いすぎている」

2ハンド初心者に多いのが、左手が“最後までボールをコントロールしようとする”ケースです。

典型パターン:

  • 助走中:左手で支える → OK

  • スイング開始:まだ左手が添えられている → OK

  • リリース時:まだ左手が離れていない → ✕(問題)

これは、「ボールを“投げる”というより“置きにいく”動作」に近くなり、スピードも回転も失われてしまいます。

✅改善ステップ:左手を“切り離す”ための具体策

✔︎ ステップ①:リリースの“1歩前”で左手を離す意識

  • 4歩助走なら3歩目のタイミングで、左手を“ふわっと離す”動作を取り入れてみましょう

  • 無理に引き剥がすのではなく、「自然に離れていくように」することが大切です

✔︎ ステップ②:「右手が下に回り込む」練習ドリル

  • ボールを両手で構えた状態から、左手を抜いて右手だけで“すくい上げる”動作をゆっくり繰り返します

  • ミラーやスマホで、リリース直前の右手のポジションが“下にある”かを確認

✔︎ ステップ③:意図的に「左手を早く離す練習」

  • 通常より1歩早く左手を離す“練習専用リズム”で投げてみる

  • 「あ、離しすぎたかも?」と思うくらいでOK

  • 体が覚えてくれば、本番ではちょうどよいタイミングで離れる感覚がつかめてきます

🎥セルフチェック:こんな動画を撮ってみよう

  • 後方から撮影して、ボールリリース時に左手がどの位置にあるかを確認

  • フォロースルーの瞬間に「左手が体の前に残っていないか?

  • 「右手がスムーズに“下から抜けて”いるか?」

📬Markからの提案:「本当に悩んでいるなら、動画を送ってください」

Mark Bakerは、最後にこう語っています:

「このパターンは珍しいので、動画を見ないと正確なアドバイスはできません。
だからこそ、私の公式サイトから“バーチャルレッスン”に申し込んで、動画を送ってほしいのです。」

それだけ、「リリース直前の左手の位置」は2ハンドの成功にとって非常に重要であり、個人差が大きい部分でもあるということです。

💬まとめ:左手の役割は“リリース前に終わっている”べき

正しい左手の使い方よくあるNGパターン
スイング開始前に支える最後まで添えたまま離さない
タイミングよく離れる無意識に“置きにいく”動作になる
右手が下に入る余地を作る右手が横から“押す形”になる

2ハンドのリリースで最大の回転と安定性を得るためには、「左手はステージの裏方」であるべきです。
出番を終えたらスッと身を引き、右手が主役として自然に抜ける空間を確保してあげましょう。

 

8. トループ型 vs ベルモンテ型のバック・スイング

〜どちらが正解?自分に合ったスイングフォームの見つけ方〜

🎯質問内容:

「2ハンドのバック・スイングに関して、Kyle Troopのような“ストレート型”と、Jason Belmonteのような“曲げた腕の型”がありますが、それぞれにメリットはありますか?どちらがオススメでしょうか?」

🧠Mark Bakerの答え:

どちらにも優劣はありません。
重要なのは、“あなた自身が、どちらのスタイルを“繰り返し再現できるかどうか”です。技術的にどちらが良い悪いではなく、あなたが一番“楽に、自然にできる”ほうを選ぶべきです。」

🔍両者のバック・スイングを比較してみよう

特徴トループ型(Kyle Troop)ベルモンテ型(Jason Belmonte)
腕の形まっすぐ伸びた腕肘が曲がった、柔らかな曲線
トップ位置高く、力強いコンパクトで滑らか
スイング軌道ダイナミックかつ直線的体に近い回転軌道を描く
利点パワーが出やすい/スピードが出やすいタイミング調整しやすい/軸が安定
適性筋力・柔軟性に自信のある人向けテクニカルに攻めたい人向け

🧢 Kyle Troop 型:パワーと爆発力の代名詞

Kyle Troopのバック・スイングは、腕を“まっすぐ”に伸ばし、トップで高く構えるスタイル。まるでボールを放り投げるような感覚で、爆発的な回転とスピードを得ることができます。

🔸メリット:

  • 大きなトップでタイミングを取りやすい

  • ボールに力を伝えやすく、強いヒットを生む

  • ダイナミックで視覚的にもインパクトがある

🔸注意点:

  • スイングが大きくなる分、コントロールが難しい

  • 柔軟性と筋力が必要で、毎回同じ高さ・リズムで再現するには高い身体能力が求められる

🎩 Jason Belmonte 型:静と動のバランス美

Jason “Belmo” Belmonteのバック・スイングは、肘が曲がり、身体に近い位置を通るコンパクトで滑らかな動作。リズムと体幹主導の投球が魅力です。

🔸メリット:

  • スイング軌道が安定しやすく、再現性が高い

  • “リリースの余白”が大きく、回転調整がしやすい

  • 体の使い方が上手くなればなるほど、コントロールとパワーのバランスが向上

🔸注意点:

  • 肘を曲げるための柔らかさとタイミング感覚が必要

  • 力みすぎると“押し投げ”になる危険性もある

🤔どちらを選ぶべき? 〜判断基準は“できるかどうか”〜

Mark Bakerはこう強調します:

「Jason BelmonteとKyle Troopは、自分にとって最もやりやすいフォームを採用しているだけです。そして、それを繰り返すことができているから世界トップにいるのです。」

つまり、「Kyle型が強そうだから真似したい」でも、「Belmo型がプロっぽいから取り入れたい」でもなく…

✅判断基準はこう:

  • 再現性があるか?(10回中9回以上、同じスイングができる)

  • タイミングがズレにくいか?

  • 身体に無理がないか?

  • リリースまで自然に“抜けていく”感覚があるか?

🏋️‍♂️フォーム選びで役立つ練習方法

✔︎ ドリル①:「片手シャドースイング」

  • 鏡の前で、片手ずつトループ型/ベルモンテ型の軌道を再現

  • スムーズに肩が回るか、肘の角度が苦しくないかを確認

✔︎ ドリル②:「ゆっくり2ハンド素振り」

  • 助走を抜き、ボールなしで2ハンドのトップポジションを再現

  • どちらのスイングが体にしっくり来るかを比較

📹動画チェックのポイント

観察ポイント理想
トップの高さ無理なく腕が上がっているか
スイングの軌道肩や背中が歪まず自然に振れているか
リリース直前の手の位置スムーズに“下から抜けて”いるか

💬まとめ:正解は「あなたが続けられるフォーム」

Kyle Troop型も、Jason Belmonte型も、世界レベルで結果を出しているスタイルです。
しかし、重要なのは「誰の型か」ではなく「自分が続けられるか」。

「ボウリングの“フォーム”は、競技の“道具”の一部です。
使いやすい道具=勝てるフォームです。」

Mark Bakerの言葉を借りれば、あなたにとって最良のスイングは「体に合っていて、何度でも再現できるスイング」です。

 

9. 5歩助走の「右への流れ」を修正するには?

〜軸足の迷走は“3歩目”で決まる!ラインコントロールを取り戻すステップ調整術〜

🎯質問内容:

「5歩助走をしていますが、4歩目(パワーステップ)で右に流れてしまい、結果としてラインを外すことが多くなっています。特にインサイドラインを狙う時に安定しません。どうすれば改善できますか?」

🧠Mark Bakerの答え:

その原因は、4歩目ではなく“3歩目”にあります。
4歩目が右に流れるのは、“その前の3歩目が正しい位置に踏み出せていない”から。つまり、“その場しのぎの修正”ではなく、“構造そのものの見直し”が必要です。」

🔍助走ステップの基本構造(5歩助走の場合)

5歩助走では、以下のような流れでリズムとフォームが構築されます:

ステップ動き主な目的
1歩目軽く前に出る(右足)リズムの導入
2歩目左足で前進体の重心を前に移す
3歩目右足を内側に出す軸を作る・回転の準備 ←ここが超重要!
4歩目(パワーステップ)左足で鋭く踏み込むスイングの加速と体重移動
5歩目(スライド)右足をスライドさせてフィニッシュフォロースルーと回転の安定

⚠️右に流れてしまう典型的なパターン

あなたが今経験している「右に流れる」症状は、以下のような“ステップの誤差連鎖”で発生している可能性が高いです。

✖️パターン例:

  1. 1〜2歩目で足がクロスしている(クロスオーバースタート)

  2. 3歩目が“まっすぐ”または“右方向”に出てしまう

  3. その結果、4歩目(パワーステップ)に逃げ場がなくなり、強制的に右に流れる

  4. 軸が外れ、右肩が前に出て、リリースが外へ膨らむ

✅Markの修正ステップ:3歩目に「空間」を作れ!

Mark Bakerはこの現象を解決するために、以下の3つのポイントを強く推奨しています:

✔︎ 1. 1〜2歩目は「まっすぐ」に出す

  • クロスオーバースタートはNG!
     → 右足を左足の前に大きく交差させるようなスタートは、すでにラインを歪ませてしまう原因になります。

  • 正しい始動は:  - 1歩目(右足):真っ直ぐ前方へ  - 2歩目(左足):1歩目の延長線上に前進

✔︎ 2. 3歩目を「2〜5枚左」に出す意識

  • ここが最大のポイント!

  • 3歩目は、必ず“インサイド”側へ進路を取ること  → これにより、4歩目(パワーステップ)に“踏み込むスペース”が生まれる

Markいわく:

「3歩目が右すぎると、4歩目は逃げ場がなくなり、“右に逃げる”しか選択肢がなくなる。
だからこそ、3歩目は『スペースを作るステップ』であるべきなんだ。」

✔︎ 3. フィニッシュ時の“真っ直ぐな頭”を意識

  • 3歩目で内側に入って、4歩目で踏み込んだあとは、「頭が右へ倒れず、中心に残っているか?」をチェック

  • 頭が傾いていれば、スイングも引っ張られてアウトサイドに流れてしまいます

🧪練習ドリル:ステップ再設計エクササイズ

🎯ドリル①:「歩幅確認ライン取り練習」

  • フロアにマスキングテープで「真っ直ぐなライン」と「左3枚ずらしたライン」を作成

  • 3歩目が必ず“内側のライン”に乗るように助走を繰り返す

🎯ドリル②:「3→4→5ステップ分解投球」

  • 3歩目以降の3ステップだけで投球を行い、右への流れを起こさずにフィニッシュできるかを確認

🎥動画チェックのポイント

観察点チェック内容
3歩目の出し方“左方向”に進んでいるか?
4歩目の角度右方向へ逃げていないか?
頭の位置最後まで“センターライン上”に保てているか?

💬まとめ:右に流れるのは「自然な結果」だった!

「右に流れてしまう…」と感じたとき、多くのボウラーは4歩目やスイングを疑いがちですが、真の原因はその1歩前、“3歩目”にあることが多いのです。

Mark Bakerはこう語ります:

「ステップがうまくいけば、フォームも勝手に整っていく。
逆に、ステップが乱れた状態では、どんなに上手いスイングも無駄になる。

つまり、「投球の安定=“軸を作るステップ”の安定」と言い換えることができるのです。

 

🎬Mark Bakerのまとめコメント

「皆さんの質問に答えるのは本当に楽しいです。もっと聞いてください。可能であれば、バーチャルレッスンを通じてあなたのフォームを直接見られると、より的確なアドバイスができます。」

🌐 Mark Bakerの公式サイト
(バーチャルレッスン申込みもこちらから)

 

📝まとめ:技術の前に「体の使い方」あり!

Mark Baker氏のレッスンで一貫しているのは、「技術の前に身体の動き」。フォームの矯正よりも、「どうすれば体が自然に動きやすくなるか」に焦点を当てたアプローチは、アマチュアこそ大切にすべき哲学です。