
PBA殿堂入りセレモニー
オニール、ラッシュ、ブランハム、シュローダーが栄誉を受ける
2025年4月、米オハイオ州フェアローンで開催された「PBA(プロボウラーズ・アソシエーション)殿堂入りセレモニー」において、新たに4名の偉大な功労者が表彰されました。
ボウリング界で卓越した業績を挙げたビル・オニールとショーン・ラッシュ、歴史を塗り替えたジョージ・ブランハム三世、そして放送面での多大な貢献を果たしたデイブ・シュローダーが、PBA殿堂に名を連ねました。式典はBowlTVにてライブ配信され、現在もアーカイブで視聴可能です。
■「リアル・ディール」ビル・オニールの歩みと覚醒
ビル・オニールは、大学ボウリング界で一時代を築いた存在です。サギノー・バレー州立大学での4年間、すべてのシーズンで全米1stチーム・オールアメリカンに選出され、3度にわたり「全米大学年間最優秀ボウラー賞(BWAA)」を獲得。その活躍は、学生時代からすでに伝説と化していました。
2005-06シーズンにPBAにデビューし、新人王を受賞。才能はすぐに認められたものの、最初のタイトル獲得までは約4年の歳月が必要でした。2009-10年シーズンの「PBAカメレオン選手権」でついに初優勝。その直後に全米オープンでメジャータイトルを獲得し、ボウラーとしての格を一気に押し上げました。
「あのタイトルが僕の人生を変えた。あれがなければ、今の自分はない。」
オニールはキャリアを通じて「リアル・ディール(本物)」というニックネームを授けられましたが、本人は長年その呼び名に違和感を持っていたと語ります。しかし、通算15タイトル、うちメジャー3冠、そして殿堂入りという偉業を前に、その異名にふさわしい存在となりました。
彼はまた、謙虚さと仲間へのリスペクトを忘れない人間性でも知られています。
「僕の周りにはこの競技で最も偉大な人たちがいた。時に、自分が劣っていると感じることもあった。でも、まさにその人たちが僕をここまで引き上げてくれた。」
■ショーン・ラッシュ:情熱の男、波乱と栄光の20年
アラスカ州アンカレッジ出身という異色の経歴を持つショーン・ラッシュは、全米のボウリングファンにその名を知られる情熱のボウラーです。彼がプロとして頭角を現したのは、2006年の「PBAウェストバージニア選手権」。予選会から勝ち上がり、史上初めて予選通過者としてPBAタイトルを手にしました。
その後も快進撃は続き、テレビ放映された最初の7試合に連勝。この記録は、今や同じく殿堂入りを果たしたジョージ・ブランハムの記録に1勝差に迫る歴代2位となっています。
最も輝いたシーズンは2011-12年。「PBAワールドシリーズ・オブ・ボウリングIII」においてすべてのイベントで決勝進出を果たし、最終戦の「トーナメント・オブ・チャンピオンズ」ではトップシードとして登場。ライアン・チミネリを下し、ポイント・獲得賞金・アベレージのすべてでツアー1位に輝き、MVPを受賞しました。
「ウィチタ州立大学に入って初めて、“このスポーツには可能性がある”と知ったんだ。」
テレビ中継では複数の300点パーフェクトゲームを記録し、2015年には史上初となる「TV中継での複数の300点達成者」となりました。
ここ数年は腰の持病(変性椎間板症)に苦しみながらも、ダブルスやチーム戦で活躍。特にマット・オーグルとのペアで2019年「ロス/ホルマン・ダブルス選手権」を制し、名コンビとして定着。2024年にはラスベガス・ハイローラーズを率いてPBAリーグ「エリアスカップ」制覇にも貢献しました。
彼の20年はまさに激情の20年。歓喜と怒り、勝利と敗北、あらゆる感情を乗せてファンにドラマを届けてきた男は、殿堂入りにふさわしい生き様を見せてくれました。
■ジョージ・ブランハム三世:ボウリング界の黒人パイオニア
ジョージ・ブランハム三世は、1986年にPBAツアー初の黒人チャンピオンとなり、歴史に名を刻んだパイオニアです。彼は合計5つのPBAタイトルを獲得し、1993年には「トーナメント・オブ・チャンピオンズ」で優勝。黒人ボウラーとして初のメジャータイトルホルダーとなりました。
特筆すべきは、今年新設された「パイオニア部門」からの殿堂入り。これは競技の枠を超えて、社会的・歴史的意義を持つ人物に贈られるものであり、ブランハムの歩みが後進に道を切り開いたことを公式に評価するものです。
「まるで夢を見ているようだった。殿堂入りを聞かされた時から、ずっと現実感がなかった。」
スピーチでは、父親への深い感謝が語られました。
「父がいなければ、僕はここに立っていなかった。本当に感謝している。」
彼の存在が、これからの世代の多様性と可能性を広げる象徴となることは間違いありません。
■デイブ・シュローダー:裏方のプロが築いたPBAメディア帝国
デイブ・シュローダーは、PBAのテレビ・メディア部門を27年間にわたり牽引してきた「影の主役」です。副社長として放送戦略を手がけ、外注だったテレビ制作を内製化し、PBAブランドの強化に貢献しました。
特に彼が主導したストリーミングサービス「Xtra Frame」は、ファンがより多くの試合をリアルタイムで観戦できる画期的な仕組みを作り、PBAの人気を大きく押し上げました。これによりPBAはデジタル領域でも成功を収め、2018年にはデジタル権利の売却につながるなど、商業的成功も収めています。
「テレビ放送がツアーの成否を分ける時代に、彼の仕事は常にプレッシャーの中にあった。しかし、彼はそれを常に完璧に遂行した。」
デイブの信念は「完璧な中継を作ることで、競技の魅力を最大限に伝える」こと。彼の献身がなければ、今のPBAの姿はなかったと言っても過言ではありません。
おわりに
今回の殿堂入りセレモニーは、実力、歴史、そして情熱を持ってボウリング界に貢献した4人の功績を称える感動のイベントとなりました。
選手として栄光を手にした者、道を切り拓いた者、そして裏方として支え続けた者。それぞれの形でPBAとボウリングを発展させてきたことは、すべてのボウリングファンにとって誇りであり、今後の世代への大きなインスピレーションとなるでしょう。