両手投げボウリングの基本と上達のコツ
ユースコーチが伝授

近年、プロボウラーや若年層を中心に急速に広まりを見せている「両手投げ(ツーハンド)」スタイル。高い回転数とコントロールのしやすさから、初心者でも一定の成果を出しやすく、注目を集めています。

今回は、元ジュニア選手であり現在はユース世代を指導するラキ氏のアドバイスをもとに、両手投げの基本動作から実践的なテクニックまでを詳しく紹介します。これから両手投げを始めたい方や、すでに実践していてさらなるレベルアップを目指す方にとって、ヒント満載の内容です。

 

ラキ氏が語る両手投げの実践テクニック

【1】姿勢と構えの基本:安定したフォームの土台をつくる

両手投げにおいて最も大切なのは「構え」の段階で自分のフォームを安定させることです。ラキ氏は、構えの際には“背筋をしっかり伸ばすこと”を強調しています。前傾しすぎるとバランスが崩れやすく、スイングにも悪影響が出ます。

ボールは腰からお腹の高さで構え、重心はやや前に置く程度でOKです。このときの上体の力みをできる限り減らすことで、次のステップへスムーズにつなげることができます。

特に大切なのが、最初の2ステップです。ここでリズムを整えることが、投球の安定性を決定づけます。焦らずゆっくりと踏み出し、身体の中心軸がぶれないように意識しましょう。

 

【2】両手の使い方とリリースの工夫

左手の使い方に迷う人も多いかもしれませんが、ラキ氏は「左手はあくまで補助」と明言しています。両手で構えることでバランスが取りやすくなりますが、リリースの瞬間には右手(利き手)主体で動かす必要があります。

左手はボールの前面に軽く添えるようにして、投球動作にスムーズにつながるよう配置します。力を入れる必要はありません。このとき、ボールの回転を作ろうとして手首をひねるのではなく、縦方向に真っすぐ押し出す意識を持ちましょう。

回転をかけるためには、「手首を無理に返す」のではなく、自然に手が上に抜ける形でリリースするのが理想です。

 

【3】グリップの深さとその効果的な使い分け

ラキ氏は、自身が使用する「真空グリップ(Vacuum Grip)」ボールについて言及しています。これは指穴にゆとりがありながらも、吸い付くようなフィット感を提供する特殊な設計で、特に二刀流スタイルには有効です。

彼は、状況に応じて指の挿し込み方を変えていると語ります:

  • 浅め(指先)で持つ場合: ボールスピードを上げたいときに有効。回転数はやや落ちるが、直線的な軌道で攻めたいときに使う。

  • 深め(第二関節まで): 回転数を増やしたいときに使用。ボールの軌道に角度をつけたいときや、オイルが多めのレーンで効果的。

このように、グリップの深さによってボールの動きに変化をつけるテクニックは、上級者を目指すうえで習得しておきたいポイントです。

 

【4】足の向きと体の角度:自然なスイングのために

足元の構え方ひとつで、ボールの方向性や回転のかかり方が大きく変わります。ラキ氏は「オープンスタンス」(足と腰を少しレーンに対して開いた姿勢)を推奨しています。

これはスイング軌道に余裕を持たせるためで、特に大きなアークを描く投球スタイルには適しています。一方で、「ストレートに投げたい人」は、足を平行もしくはやや閉じた構えにするのが効果的です。

足の向きひとつでもプレイスタイルに大きく影響を与えるため、自分に合った立ち位置を見つけることが大切です。

 

【5】狙いのつけ方:矢印を超えて“その先”を見よ

多くのボウラーが「矢印」(レーン中央付近のマーク)を目標にして投球しますが、ラキ氏は「その先のブレークポイント(曲がり始める地点)」を見据えることが重要だと語ります。

矢印はあくまで通過点。手の軌道が矢印を通るようにして、その先にある“曲がるべき場所”を意識することで、ボールの動きをより精密にコントロールできるようになります。

特に両手投げでは回転数が高くなる傾向にあるため、ブレークポイントを誤ると大きく外れてしまうリスクが高まります。

 

【6】プッシュアウェイとバックスイング:無理なく振るコツ

ボールを前に押し出す「プッシュアウェイ」は、フォーム全体のリズムを決定づける重要な動作です。ラキ氏は「プッシュアウェイは矢印に向かって“まっすぐ”」が理想と語ります。

また、バックスイングの高さについても「自分の身体の限界に合わせる」ことが基本です。例えば、プロボウラーのウェスリー・ロウのように高いバックスイングは回転数を増やす一方で、身体に負担がかかります。ラキ氏自身は比較的低めのバックスイングでスピードと安定性を両立させています。

 

【7】回転のかけ方:フットボールを使ったイメージトレーニング

最後に、リリースの際の手の感覚について。ラキ氏は「フットボール(アメフトのボール)を下から回転させて投げる感覚」が有効だと語ります。

この方法では、手のひらを時計の“12時”と“1時”の間に保つことが理想とされます。これにより、自然な回転が生まれ、無理なくボールを回すことが可能になります。

無理に手首をひねって回転をかけようとすると、方向性や安定性が損なわれてしまいます。リリースは「ナチュラルなスパイラル」を目指すべきだとラキ氏は強調しています。

 

おわりに

両手投げというスタイルは、型にハマった投げ方ではなく「自分の身体と対話しながら、自分に合ったフォームを作り上げていく」ことが成功の鍵となります。ラキ氏が繰り返し伝えていたように、大切なのは“他人の真似ではなく、自分に合う要素を取り入れていく姿勢”です。

ボウリングは、集中力や身体の使い方だけでなく、メンタルの安定も求められる奥深いスポーツです。両手投げの技術を身につけることで、さらにその魅力を感じられるはず。これを機に、あなたも自分だけの理想的な投球フォームを見つけてみてはいかがでしょうか。